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タロットの歴史(全5回+番外編)
- タロットは元々「占い道具」ではなかった
- なぜ大アルカナは22枚? 並び順にこめられた中世の世界観(この記事)
- ゲームから占いの道具へ。18世紀フランスの神秘主義ブーム
- 愚者から世界へ。22枚が描く「魂の成長ストーリー」
- こわくない!「塔・死神・悪魔」の前向きな読み方
番外編①:タロットと占星術の深い関係(12星座・惑星に対応するカード)
番外編②:小アルカナ56枚をくわしく(数字・スート・コートカード)
番外編③:タロット以外のカード占い10選(ルノルマン・シビラ・ルーンなど)
はじめての方は、入門連載「カード占い入門(全10回)」の第1回からどうぞ。
前回は、タロットがもともと北イタリアの貴族が遊ぶカードゲームだったことをご紹介しました。
今回のテーマは、ゲームの「切り札」として生まれた大アルカナの22枚です。なぜ22枚なのか、そしてなぜ「魔術師」から始まり「世界」で終わるあの順番なのか。中世ヨーロッパの人々の世界観をヒントに、その謎をのぞいてみましょう。
実は、最初から「22枚」と決まっていたわけではない
意外かもしれませんが、タロットが生まれたばかりの15世紀には、切り札の枚数も並び順も、まだ決まっていませんでした。
残っている古いカードや記録を見ると、作られた町によって絵札の顔ぶれや順番が少しずつ違っていたことがわかります。ミラノ、フェラーラ、ボローニャなど、地域ごとに「わが町の並び方」があったと考えられています。
その後、フランスを中心に広まった「マルセイユ版」と呼ばれる形のタロットで、切り札21枚+愚者1枚=22枚という構成と並び順が定着していきました。今のタロットの多くも、この形がもとになっています。
並び順は、中世の「世界のしくみ」を表している?
では、22枚の並び順にはどんな意味があるのでしょうか。よく紹介されるのが、中世ヨーロッパのキリスト教的な世界観を、下から上へ順に並べたものという読み方です。
地上の人間社会から始まり、人生の試練や美徳を経て、死や天体の世界へ、そして最後は神の救いへ――。ゲームでは番号が大きいほど強い札だったため、「より高い存在ほど強い」という考え方が、そのまま切り札の強さになったのではないか、というわけです。
区切り方には研究者や解説者によっていくつかの見方がありますが、ここでは大きく4つの段階に分けてみます。
| 段階 | 番号 | 主なカード | テーマ |
|---|---|---|---|
| ① 地上の社会 | 1〜5 | 魔術師・女教皇・女帝・皇帝・法皇 | 人間社会の身分や権威 |
| ② 人生と美徳 | 6〜11 | 恋人・戦車・力・隠者・運命の輪・正義 | 人生の選択や試練、守るべき美徳 |
| ③ 死と宇宙の力 | 12〜18 | 吊るされた男・死神・節制・悪魔・塔・星・月 | 人の力を超えたもの |
| ④ 光と救い | 19〜21 | 太陽・審判・世界 | 神の光と、魂の完成 |
※番号はウェイト版(ライダー版)の場合です。「愚者」は番号のない特別な札だったため、この並びの外にいると考えます。
① 地上の社会(1〜5):身分や権威の世界
最初に並ぶのは、魔術師(大道芸人の姿で描かれることも)、女教皇、女帝、皇帝、法皇。当時の社会で目にしたさまざまな身分や権威の人々です。
中世の人々にとって、皇帝や法皇は地上で最も力のある存在でした。けれどタロットでは、彼らはまだ「はじまりの段階」にすぎません。
② 人生と美徳(6〜11):誰もが通る道
次に続くのは、恋人、戦車、力、隠者、運命の輪、正義。恋や成功、老い、運命の浮き沈みなど、人生の中で誰もが出会うできごとが描かれています。
どれほど身分の高い人でも、恋に悩み、年を重ね、運命の輪に翻弄される。社会の上下を超えた「人生そのもの」の段階といえそうです。
③ 死と宇宙の力(12〜18):人の力が及ばないもの
吊るされた男、死神、節制、悪魔、塔、星、月。ここからは、人間の力ではどうにもならない大きな力が登場します。
死は誰にも平等に訪れ、悪魔の誘惑や、天から落ちる雷(塔)も避けられない。その先には、夜空に輝く星と月が広がります。地上を離れ、宇宙へと視線が上がっていくようです。
④ 光と救い(19〜21):神の世界
最後は、太陽、審判、世界。キリスト教でいう「最後の審判」で死者がよみがえり、魂が救われて完成へと至る姿で締めくくられます。
地上の皇帝よりも、死よりも、星よりも強い――。それが、神の光に包まれた「世界」のカードだった、というわけです。
22枚の中に隠れた「3つの美徳」
大アルカナの中には、「正義」「力」「節制」という3枚のカードがあります。これは、古代ギリシャから中世へと受け継がれた「4つの徳(枢要徳)」のうちの3つにあたります。
- 正義: 公正であること
- 力(剛毅): 困難に負けない強さ
- 節制: 欲におぼれず、ほどよさを保つこと
- 賢明(思慮): 正しく判断する知恵 … これだけがカードにない
4つめの「賢明」がなぜ大アルカナにないのかは、はっきりとはわかっていません。「隠者がその役割を担っている」「もともとあったが失われた」など、さまざまな説が語られてきました。
中世の人々にとってなじみ深い美徳が描かれていることからも、大アルカナが当時の価値観を映した絵札だったことがうかがえます。
「力」と「正義」の番号が入れ替わった理由
タロットに詳しい方なら、デッキによって「力」と「正義」の番号が違うことに気づいたかもしれません。
- マルセイユ版など: 8番が「正義」、11番が「力」
- ウェイト版(ライダー版): 8番が「力」、11番が「正義」
この入れ替えは、20世紀はじめにウェイト版を作った人たちが、占星術との対応を考えて番号を変えたためだといわれています。つまり「正しい番号」は一つではなく、デッキの考え方によって違うのです。
星座と大アルカナの対応や、入れ替えのくわしい理由は、番外編:タロットと占星術の深い関係で紹介しています。
自分のデッキがどちらの順番か、一度見比べてみるのもおもしろいですよ。
「22」という数字の意味は、後から加わった
タロットの本などで、「大アルカナの22枚は、ヘブライ語の22文字に対応している」という説明を見かけることがあります。
ただ、このような結びつけが広まったのは、タロットが生まれてから300年以上たった18〜19世紀のこと。最初からその意味をこめて22枚にしたわけではなく、のちの時代の人々が、22という数に新しい意味を見いだしたと考えられています。
ゲームの切り札だったタロットが、どのようにして神秘的な意味をまとっていったのか――それは次回のお話です。
マルセイユ版とウェイト版、2つの並び順を実際に見比べてみたい方に。
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まとめ:並び順を知ると、22枚が一つの世界に見えてくる
- 切り札の枚数や順番は、最初は地域ごとにばらばらだった
- 並び順は、地上の社会から神の世界へと上がっていく中世の世界観で読むことができる
- 「正義」「力」「節制」は、中世の美徳を表すカード
- 「力」と「正義」の番号は、デッキによって違う
- 22という数字の神秘的な意味は、後の時代に加わった
バラバラに見えていた22枚も、「下から上へ」という流れで眺めると、一つの大きな世界を描いた絵巻のように見えてきませんか。
次回は、「ゲームから占いの道具へ。18世紀フランスの神秘主義ブーム」をテーマに、タロットが「運命を映すカード」へと生まれ変わったいきさつをたどります。お楽しみに。
タロットがどのように生まれたのかは、前回のタロットは元々「占い道具」ではなかったで紹介しています。大アルカナと小アルカナの違いはタロットの78枚は「5つの種類」に分けると一気にわかるもあわせてどうぞ。
タロットの歴史(全5回+番外編)
- タロットは元々「占い道具」ではなかった
- なぜ大アルカナは22枚? 並び順にこめられた中世の世界観(この記事)
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